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殴られる。
蹴られる。
叩かれる。
何度も何度も続く。
髪を振り乱し、鬱憤をぶつけている。
そんな母の姿を見て、自分の体に溜まる痛みを覚えながらも、奏汰の頭にあるのは、また姉である桜に何かを言われるのだろうな、ということだけだった。
どうやら母は、この髪と眼が嫌いらしいのだ。
銀色の髪と、赤い瞳。それはまるで吸血鬼や悪魔のようで。そのせいで奏汰の父という人が家から出てしまったんだそうだ。
実際、学校に行っても、外に出てもこんな姿の人に出会ったことがない。
昔はよくからかわれ、いじめられたりもしたが、その度に桜は奏汰のために怒ってくれた。
そんな姉さんは、どうやら母のことが嫌いらしい。
そっちの方がよほど魔女のようだ、と言っている。
たしかに、暴力はすごい。けれど、あの人が奏汰たちの母親であることはどうあがいても変わらない事実だ。
なんだかんだ言う割に、奏汰たちを養うために働いている。
だから、家事は奏汰の仕事。
それに、姉さんがやろうとすると母と喧嘩になるかもしれない。
姉さんも、母も大事だから、奏汰は必死に耐える。
体中にあざを作りながら、それでも家族を守りたいと願っているのだ。
「…大丈夫?」
姉さんが心配そうに声をかけてくれた。
「平気だよ。もう慣れっこだからさ。」
だから、心配しなくて大丈夫。だから、その殺気は抑えてね。
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