通勤は仲間であふれている

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 そんな私が朝一番に、気を使う相手である隣に座る彼女は、私の娘と同じくらいの年齢だと思うのだが、娘よりシッカリした子だ。もちろん話したことなど無い。男の感というやつだ。  しかし、根拠はある。  なぜなら、今まで遅刻もなければ、慌てて乗車することもない。私が使う最寄り駅と同じ駅を使用していて、いつも私より早くホームで電車を待っている。とても、真面目だ。私が先程、座り直した時も軽く会釈をして、何事も無かったように、振る舞ってくれた。  大慌てで、座る体制を取った禿げとは、大違いだ。  そして、寝坊常習犯の私の娘とも大違いだ。娘本人が言うに、仕事は早いが、入社時間は、常にギリギリの到着らしい。電車が遅れることも考慮する私には、考えられない。だが、娘にすれば「電車が遅れるのは、私のせいじゃないから」らしい。なんとも、妻に似て、図太い性格になってくれた。きっと、働き方改革にも、柔軟に対応していることだろう。  多分、娘と正反対な隣に座る彼女は、常に本を片手に、イヤホンを耳に嵌めて、揺れる車内を過ごす。本の種類は、英会話、ファイナンシャルプランナー、野菜ソムリエなど、いつも何かを勉強している姿に、感心している。     
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