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ただ、嫌いとはいっても、父を認めていないわけではない。むしろ、尊敬すらしている。
なんせ、他者は、父を今までで一番の当主だというのだから。
そんな地位を作り上げた父は、かなりの偉人といえるのだろう。あくまでも、世間的には。
そして、彼の野望のための犠牲者たちは、報われはしないだろうけれども。
そうは言っても、偉大なる父の力、あの暴力的なまでの知恵を僕が受け継いでいるのかどうかは、また別の問題である。
父は僕を選んで良かったという。何と比べているのか、誰と秤に乗せたのか。僕は知らない。
そして、僕が選ばれた理由も知らない。
ただ、父のようにはなりたくない。それだけは強く思う。
笑いながら、隠しながら、腹の内では嫌っている。仮面的な親子であることに、父は気がついているのだろうか。
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