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先ほども述べたが、僕と父の間には、何もない。かあさんがいない今、家族としての関係性は非常に薄い。
理由は、いたってシンプルだ。なんせ、彼は家にほとんどいない。
彼は常に家を空けているので、顔を会わせることは少ない。そもそも、まともに会いたくない。
かあさんも父に付き添って大抵の場合は留守だが、よく電話をくれる。写真入りの手紙も来る。背景は海だったり、山だったり、町並みだったり、様々だ。
ただし、その中に、父はいない。かあさんが独りで写るのみである。
そんな家庭環境であるから、人生の大半において、僕にとっての同居人は、住み込みの雇人たちだけであった。
かあさんはともかく、僕は父を家族と認識したことはない。父は、父という名のつく存在。それ以上でも以下でもない。
愛情など、繋がりすら求めたって無駄だ。形骸化した僕らの関係に、名称などいらない。
故に、家族としての意識など皆無である。
そもそも、少しでも家族という概念があるのであれば、かわいい息子を施設になんかにぶち込まないだろう。
壊れた息子を見て、出来た息子と思うだろうか。
彼にとって、僕はただの後継者で、自分の操り人形としか思っていない。そうに決まっている。
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