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賑わいを見せるおもちゃ屋さん。今日はクリスマスだ。子供たちがあれもこれもと親にねだっている姿が見える。
店内はサンタ姿の従業員がチラシやクリスマス仕様の飴玉を配っている。大人の自分は在庫処分、と夢がないことを考えてしまうが、社会を知らない子供達にとっては嬉しいだろう。人がいる手前、親も文句は言えない。それを知っている子供は貰ってすぐ飴の包みを開いて口に放る。
僕にもこんな時代があった。あの頃は自分が王様だと思っていた。ちょっと泣き喚けば欲しい物は何でも手に入った。たまに怒られて置いていかれそうにもなったが、それでも最後には親の方が折れて買ってもらえた。
ここにいる子供達も同じだ。特撮グッズをベタベタ触っている男の子、キラキラと光るおもちゃの宝石を見つめている女の子、皆これが欲しいと強請っている。中には心が成長していない、子供みたいな大人もいるが……まあ、趣味は人それぞれなので見なかったことにしよう。
急に場面が変わる。ボロボロなシフト表が貼ってあるからスタッフルームだろう。僕の目の前でサンタ服の従業員が、大きな白い袋に何かを詰めている。周りにおもちゃの箱は見当たらない。一体何を入れているのだろう?
好奇心には逆らえない。僕はサンタに近づいて中身を確かめた。袋の中には大量のクマのぬいぐるみ。目や腕がなくなっているのもある。
何のためにこれらを袋に入れているかは分からない。これをプレゼントしても喜ばれないだろうに。子供の頃の僕だったら泣いてしまうかもしれない。
サンタはぬいぐるみを入れる手を止めない。声をかけてみても反応がないから、僕はその場をそっと離れてスタッフルームの外に出た。ここにも大量の袋が置いてある。中身は詰まっていてパンパン状態だが、どれもまだ縛っていない。ちょっとの衝撃で飛び出してしまいそうだ。
一つずつ中を確認していく。どうやらおもちゃの種類ごとに分けられているようだ。一番遠いところにあった袋を覗く。ガラガラだ。同じ種類のガラガラが大量に詰め込まれている。うっかり足が当たってしまったらすごい音が鳴りそうだ。
今はガラガラのことを考えたくない。僕は音を鳴らさないよう慎重に横を通り過ぎ、おもちゃ屋さんの出口の方へ向かった。
お店を出る直前、後ろを振り返る。ガラガラが入った袋を持ったサンタがこちらへ歩いてきているのが見えた。
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