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定時のチャイムが鳴る。なんと、祈りが届いてトラブル一つなく終わった。同じ作業場のメンバーは、この珍しい事態に驚いた。しかし喜んでばかりもいられない。すぐに顔を引き締め、帰りの準備を始めた。
職場から家まで、信号が七つある。そのうち二つは押しボタン式信号機で、運が悪い時はすべての信号に引っかかる。だが、今日は神様が僕の味方をしてくれているのか、一つも赤信号にならなかった。
普段より五分早い到着。家の様子に変わりなし。さあ、今日でケリをつけよう。あのクマのぬいぐるみに取り憑いているはずだ。好美には悪いと思うが、今後のためだ。
玄関のドアを開けて家の中に足を踏み入れる。僕は前日と変わらない光景を思い描いていた。外から見て何もなかったせいもある。
家の中は荒れに荒れていた。最初は泥棒かと思ったが、窓に幼稚園児サイズの赤い手形が無数についているのを見て、それは違うと確信した。手は、内側からつけられている。
――ほシい
――ほシい
僕じゃない声が反響する。何が欲しいのか。もちろん質問してやる気はない。
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