0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ、何か不穏な気配がすると思ったら……植田さん、早くこちらへ!」
社務所から焦った様子の設楽さんが出てくる。ああ、良かった。留守にしていたらどうしようかと思っていたが、それは杞憂だったようだ。
「すいません、霊が憑いている物が見つかったので……」
「ええ、ええ見ればわかります。黒い靄が植田さんの背中に……ささ、まずは手水舎でお清めを」
手水舎に案内され、看板に書いてある手順を読む。毎年やっていることだが、看板を見れば分かるので覚えたことはない。
今回も手順通りに進めてお清めを終えると、すぐさま本殿に通された。ここまで入ったことないから物珍しさにキョロキョロしてしまう。好美がいたらはしたないと怒っていただろう。
お祓いはすぐに始まり、僕は静かに設楽さんの様子を見る。正直、何をしているのかはサッパリだ。お祓い道具の名前もわからない。知っていたら楽しめただろうか。時間にして一時間、疲労が溜まってきた頃に太鼓の音が鳴ってお祓いは終わった。
最初のコメントを投稿しよう!