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咆哮
ーグリーフ王国ー
~領土、『フリースカイ』~
侵略を続けるインセンス帝国の次のターゲットである。
この地を失えば実質『王都ソレイユ』までの侵攻ルートが確保され、喉元に噛みつかれる絶望的な状況となる。
フリースカイを陥落させることだけは何としても避けねばならない。
グリーフ王国は全兵の3割を動員し、鉄壁の守りで侵攻を防いでいた。
しかし先日、インセンス帝国の軍隊長クラスと『魔の大砲』が現場に多数導入され、徐々に陣形は崩されていく。
防衛の指揮を執るのはガーザスで総大将を務めたマドロック・ローガンと3人の指揮官である。
ここでいう『指揮官』とは、『隊長』の直属以外の兵の指揮と、戦略会議などで議論を交わす役割の人物を指す。
自由な判断で動ける隊長とは違い、国の方針を動かす"核"である。
中には隊長から昇進した者もいるが、基本的には貴族出身の知略的な者が多く、戦闘力は高くない。
指揮官の1人、ジョゼル・ゼバーンは慌てた様子で言う。
「おい!ローガン隊長、"例の大砲"がきたぞ!対策の術は君の『龍虎砲』しかないっ!早く準備を!!」
「逸るなジョゼル指揮官。龍虎砲は攻撃範囲が広すぎる。前線の味方を巻き添えにする訳にはいかない」
そう返すローガンも対応策が思いつかず内心焦っていた。
「その躊躇が先の戦いでの敗戦を招いたのではないのか?ここを失えば我らは終わりなんだぞ!?」
もう1人の指揮官、ロリック・ロラーリが横槍を入れる。
「むぅ…」
ローガンは黙ってしまった。彼はガーザスの戦いで撤退命令を出すタイミングが遅れたことを悔いていたのだ。
「マーレ副隊長!いいから早く持ってこいっ!!」
ゼバーンはローガン隊の副隊長の名を呼ぶと強い口調で言った。
「最早手段を選んでいる場合では無いですぞ。決断は早くせねば」
3人目の指揮官、シュナイゼル・ドローンはローガンを諭した。
(くそっ、これまでか…)
ローガンが覚悟を決め、龍虎砲を持ってこさせようとした矢先、伝令兵が通達に来る。
「伝令です!援軍に隊長が一名、兵を率いてこちらへ到着致しました!」
「誰だ!?」
ローガンの問いに対し伝令兵は答える。
「プレース・ロア隊長です!」
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