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月が真上に来た頃、ようやくリュカが足を止めた。
「着いたよ」
短い言葉に、大男が唾を飲み込んだ。顔面から疲れが吹き飛び、一転して喜びで満ちる。
ゆっくりと足を進める。その一歩一歩踏みだす足音がやけに大きく聞こえた。
大岩の間の細い道の先で、視界が一気に開ける。
「…………!」
男は思わず言葉を失い、目の前の光景にぽかんと口を開けた。
一面に広がる白い花。満月の光に、それは輝きと甘い芳香を放っていた。
これまで暗かっただけに月と花の白が眩しく、夜の青に引き立てられている。
「ユーステラの花。月の満ち欠けで色の濃さが変わるから、月見草とも呼ばれてる。……幻の花って言われるのは、太陽の光を受けると花びらが透明になって見えなくなるからだよ」
やっとリュカが案内人らしい説明をしてくれた。大男は口の中で「すげえ」と呟いたが、それは音にならなかった。
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