一族の秘密

5/5
45人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
リュカは面白くなさそうに口を尖らせた。 「クドゥルが言ってた『谷を守る』って、そういうことじゃないでしょ」 ユーステラの花は摘み取ると花弁が開いていく。すると中に閉じ込められていた、目に見えないほど小さな粒子が飛び、それがどうやら直前の記憶を忘れさせるようだ。 あの大男が次にリュックを開く時には、花も透明で見えなくなり、雑草だけがあるように見えるはずだ。谷に行ったことを忘れた彼はリュックをひっくり返して花を捨てるだろう。後に残るのは、自分がなぜか大金を失ったという事実だけだ。 では、闇市で高値で売られているという情報は? それはリュカたちの一族のある者たちが地の方々(ほうぼう)でばら撒いた噂だ。貴金属で身を飾り、いかにも裕福に見えるなりで語るのだ。 元々彼らは森と谷から来る水の恵みを受けながらひっそりと暮らしていた一族だ。 (おさ)であるクドゥルは亡くなる前に言った。 みんなで谷を守ってくれ、と。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!