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鼻の下を伸ばしてウットリと宙を見つめる彼を、ヒゲ男が現実に引き戻す。
「案内には金がいる」
低くしゃがれた声にハッとすると、彼はコートの内ポケットに手を入れた。
「現金ではないのですが」
取り出された見すぼらしい袋。ひっくり返すと、重そうなネックレスがごとり、とテーブルの上に落ちた。
美しい模様が彫られた金のはめ込み。その中の真っ赤な宝石はダイヤモンドカットが施されており、奥の奥まで繊細な光を宿していた。
見るからに高価なその装飾品が彼の懐から出てきて、ヒゲ男は眉を顰めた。カップを手に様子を見ているリュカに、本物かどうか確かめるよう目だけで促す。
リュカは静かに歩み寄ると、二人が注目する中でそのネックレスを手に取った。その宝石をペロリと舐める。
「えっ!?」
驚いた客を気にも留めず、リュカは舌先を口の中に引っ込めた。
「しょっぱい」
「本物か。それならきっとかなり高価だな」
ヒゲ男はポケットから布を取り出し、表面をきれいに拭き上げて嬉しそうにその宝石を覗き込んだ。
「な、なんで舐めて分かるんですか?」
「偽物は味がしない」
「そ、そうなんですか……」
へえー。感心したように彼は頷いた。
「コイツにしかできない芸当だよ」
ヒゲ男は目線をネックレスから逸らすことなく呟いた。
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