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一族の秘密
小さなカンテラの明かりを頼りに、方向感覚のなくなりそうな森の獣道を歩いていく。落ち葉や苔、湿気をまとった石で足元が滑りやすい。慣れているのだろうが、この少年が迷いなく歩いていく様子に大男は安心感を抱いていた。
森を抜けると、今度は大岩の狭い割れ目を通り抜けた。鉱脈の名残があり、岩肌が光にキラキラと輝いている。掘り進めれば宝石の原石が出てきそうな雰囲気に「幻の花」への期待も膨らんだ。
道先案内人のリュカは、長い坂を登っているのに息を切らすこともなく淡々と話した。
「言っておくけど、ユーステラの花に願いを叶える力なんてないよ」
「……へっ、言ってな。酒場で俺は聞いたんだよ。大富豪から。それが闇で相当な高値で売れるってな」
大男は肩を大きく上下させながら笑う。その汗ばんだ表情には既に余裕がなくなっていた。
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