第19章 山奥の小屋の白骨死体……えっ、ここに来てミステリー展開の予感?

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第19章 山奥の小屋の白骨死体……えっ、ここに来てミステリー展開の予感?

「知っている? 勇者アリアを知っているのか? マジか? クロエ!」 「勇者、というのはよく知らないが」  クロエは、静かに言った。 「クロエはこの村の奥にあるバックス山に住んでいる。もう何十年も住んでいる。だから知っているのだが、そのバックス山の中に20年ほど前、狩人の夫婦が住み着いた。夫婦はやがて子を為した。その子供が確か、アリアといった」 「山の中に住んでいた、夫婦の子供……アリア……」 「そ、そのアリアと、狩人の夫婦はまだ、山の中にいるのですか?」  ルティナ姫が、おずおずといった様子で声を出した。  まだ、エルフに対する恐怖と不信感があるようだ。 「いると思う。3年前には山の中で狩りをしているのを見かけたが」 「3年前って、えらく情報が古いな」 「古い? たったの3年だぞ」  クロエはキョトンとした顔で言った。  そうか、エルフって寿命が確か500年くらいあるんだっけ。  それなら、3年も『たった』って感覚になるのか。……クロエって何歳なんだろう。見た目は10代後半にしか見えないけど。  ……とにかく、3年前でもアリアが山中にいたことは事実のようだ。  だったらそこにまず行ってみよう。 「クロエ。よかったら俺たちを、その狩人のところまで案内してくれないか? 礼はする。金とか食べ物とかで……」 「カネというのは、それで道具や食べ物と交換する、あの銀色の物体のことだろう? ならば要らない。使い方がよく分からない。食べ物も不要だ。クロエは別に飢えてはいない」 「そうか……困ったな。どうしよう」 「礼など要らない。クロエはキミを案内する」 「いいのか!?」 「いいさ。……エルフの耳を侮辱せず、かばってくれた人間エルド」  クロエは、微笑を浮かべた。 「クロエはキミが好きになった」  そんなわけで、山道をひたすら進んでいく。  俺、ルティナ姫、アイネス、そしてエルフのクロエの4人で歩く。  バックスの村の農民さんは、農作業があると言うので同行を拒否した。  でもまあ農作業ってのは口実だろうな。一番の理由は、エルフといっしょに歩くのが怖かったからと思う。なにをそんなに怖がってるのか知らんけど。  てか、ルティナ姫とアイネスもそうなんだよな。  クロエに対して、妙に警戒心を抱いているみたいだ。 「……エルド様。……ああ、あのエルフ……すごく美人で、おっぱいもすごい……あんな美人が、あんな美人が、エルド様を好きになった、なんて……」 「姫様、お任せください。あのエルフをこれ以上、エルドに近づけさせたりしません。なんとかして切り離しましょう……!」 「そうね……。あ、でも、手荒なことをしてはだめよ、アイネス。あのエルフ、そんなに悪いひとでもなさそうだし……」 「分かっています。優しくエルドから離しましょう。なんとかして……」  ――彼女たちの会話は断片的にしか聞こえないが、クロエに対してよからぬことをたくらんでいるのは間違いない。クロエが俺に好きだといったのも不満のようだ。  好きだって、なあ。  そりゃ、人間として、って意味だろうに、なあ?  なお肝心のクロエは、ルティナ姫とアイネスの会話など聞こえてはいないらしい。スイスイスイと軽やかな足取りで、俺たちの前を進んでいる。が、やがて、ピタリと足を止め、 「ここから森に入る」  と、振り返りながら言った。  なるほど、これまでは山肌に広がっている高原の坂道を進んでいたが、いま俺たちの目の前には森が広がっていた。 「この奥に狩人の夫婦が住んでいる家があった。アリアはそこにいると思う。……足元にはよく気をつけろ。この森には毒虫がよく這っている。噛まれると痛いし、しばらく痕も残る。クロエも先日噛まれた」 「うへ、この山に住んでいるクロエでも噛まれたのか。……でも、痕はもう消えてるみたいだな」  シミひとつない綺麗な肌のクロエを見ながら、俺は言った。  腕にも足にも、それらしい痕は見当たらない。 「噛まれたのはここだ、エルド」  そう言ってクロエは――さっと、ミニスカート風の衣をたくし上げた。って―― 「な、な、なにしてんだ、クロエッ!」 「噛まれた痕を見せている。……ここだ。クロエはこの、ふとももの付け根のあたりを噛まれた」  そう言いながら彼女は、スカートをたくし上げたかっこうのまま、白い内ももの付け根の部分を指さした。  白く、むっちりとした肉付きのいいナマふとももの内側。そこには、しかしもう、虫の噛み痕などまるでない、艶めかしい女性の柔肌だけが広がっている。しかしそれ以上に俺の目には、クロエの真っ白な下着だけが視界に入って――うわっ!? 「ななななな、なにをしているのですかクロエッ!」  ルティナ姫の叫び声と共に、目の前が真っ暗闇になった!  どうやら、ルティナ姫の両手によって俺の両目が塞がれていると分かったのはきっかり3秒後のことだった。 「そ、そんな、そんなところをエルド様にお見せするなど、なんてはしたない!」 「そそそ、そうだ、クロエ! 破廉恥な! あまりにも破廉恥すぎるぞ!」 「……? なにがはしたなくて破廉恥なのだ? クロエは虫に噛まれた部分をエルドに見せただけだが?」 「虫はどうでもいいのです! そそそ、そこを、下着を見せるのがはしたないと言っているのですっ!」 「エルフに羞恥心はないのか!? し、下着を男性に見られてなんとも思わないのかっ!!」 「全裸を見せるのには、さすがに少々、抵抗があるが」 「少々」 「少々で済むのか!?」 「しかしいまのクロエはパンツを履いている。女性の部分を隠すための下着だ。それを装備している以上、恥ずかしさをなぜ感じなければならないのか。ましてクロエは、エルドに好意を抱いている。仮に女性の部分を見られたとしてもなんとも思わない」 「なんとも!」 「思わない……!」  ルティナ姫とアイネスが、絶句しているのが気配で分かった。  なお俺は、ルティナ姫によって両目を塞がれた上に、その1秒後にはアイネスによって両耳まで塞がれてしまったので、いったいなにが起きているのかよく分からない。  なんなのかな? この状態。 『……混ざりたい……ザザザ……』 「着いた。ここだ」  クロエに導かれるまま、森の奥へと進んだ俺たち(幸い、虫に噛まれることはなかった)。  ふもとにあるバックスの村から歩いて2時間ほどかけてたどり着いたその場所は、木漏れ日が射し込む森林の最深部。  そして陽の光が当たっているその場所には、薄汚れた小屋が確かに建っていた。 「あの家が、アリアと、その両親の家か?」 「そのはずだ。……クロエも遠くからたまに眺めていただけだから、詳細は知らないが」 「とにかく尋ねてみたらどうだ」 「そうだな……」  アイネスの言葉に従い、俺たちは歩みを進める。  そして小屋のドアを、トントン、とノックしたのだ。 「すみません。旅の者ッスが、こちらにアリアさんって方、いらっしゃいます?」  俺なりに、丁寧に告げたつもりだ。  …………5秒。10秒、20秒。  小屋の中から、返事はない。留守か? それとも――  俺は何気なく、小屋の扉を押してみた。  すると、きぃぃ、と音を立てて、ドアが奥へと開いていく。鍵もかかっていなかった。  人の気配がしない。  どころか、なんだか嫌な予感がする。 「入るッスよ。失礼しまーす……」  俺はそっと、小屋の中に、足を踏み入れた。  すると、そこには、 「きゃあああああっ! え、エルド様ああああっ! そ、そこ、そこっ!」 「おおうっ……!?」  ルティナ姫の叫び声を聞く前に、気が付いていた。  小屋の中に、大量の白骨が散らばっていることに――  こ、これは……  なにやらミステリーの予感!? -----------------  つぶやきのほうで告知していましたが、肝臓の調子を崩していたのでしばらく更新できませんでした。申し訳ございません。  自分の体調やペースを見ながら、また投稿を再開していきます。よろしくお願いいたします。
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