178人が本棚に入れています
本棚に追加
第1章 お約束のようにドラゴンと姫様
「グギャアアアアアっ、どこから現れた!? この人間め!」
巨大な竜が吼えている。
体長は、俺の数十倍はあるだろう。
緑色に艶光りした肌。血走った鋭い眼。鞭のようにしなっているシッポ。
これは間違いなく――
モンスターの、ドラゴンだ。
「な、なんだよ、これ。ここ、どこだよ!? 俺、なんでこんなところに……」
あたりを見回すと、どう見てもここは酒場じゃない。
薄暗い、洞窟の中だ。壁に小さなロウソクがいくつか取り付けられ、わずかな灯こそあるものの、しかし視界は基本的によろしくない。だが、そんな状態でも目の前にドラゴンがいるのは分かる。そして――
「逃げて! 逃げてください!!」
ドラゴンの後ろには、小さな牢屋がある。
その入り口には鉄格子が取りつけられていた。
すなわち牢屋である。その牢の中から、亜麻色の長い髪をした美少女が、俺に向かって叫んでいるのだ。
「旅の方! どうかお逃げくださいませ! 殺されてしまいます!」
「いや、そんなこと言われても。俺、ちょっと状況がつかめなくて……」
「グワッハッハッハ! そうだ、人間よ。逃げたほうが身のためだぞ――と言いたいところだが」
最初のコメントを投稿しよう!