第1章 お約束のようにドラゴンと姫様

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第1章 お約束のようにドラゴンと姫様

「グギャアアアアアっ、どこから現れた!? この人間め!」  巨大な竜が吼えている。  体長は、俺の数十倍はあるだろう。  緑色に艶光りした肌。血走った鋭い眼。鞭のようにしなっているシッポ。  これは間違いなく――  モンスターの、ドラゴンだ。 「な、なんだよ、これ。ここ、どこだよ!? 俺、なんでこんなところに……」  あたりを見回すと、どう見てもここは酒場じゃない。  薄暗い、洞窟の中だ。壁に小さなロウソクがいくつか取り付けられ、わずかな灯こそあるものの、しかし視界は基本的によろしくない。だが、そんな状態でも目の前にドラゴンがいるのは分かる。そして―― 「逃げて! 逃げてください!!」  ドラゴンの後ろには、小さな牢屋がある。  その入り口には鉄格子(てつごうし)が取りつけられていた。  すなわち牢屋である。その牢の中から、亜麻色の長い髪をした美少女が、俺に向かって叫んでいるのだ。 「旅の方! どうかお逃げくださいませ! 殺されてしまいます!」 「いや、そんなこと言われても。俺、ちょっと状況がつかめなくて……」 「グワッハッハッハ! そうだ、人間よ。逃げたほうが身のためだぞ――と言いたいところだが」     
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