第1章 お約束のようにドラゴンと姫様

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 生まれ故郷の村の近くには何体も昼間からうろうろしていたが、魔王軍の中でもきわめて戦闘力が低いモンスターである彼らは、俺や勇者アークでなくても、普通の村人でもときどき退治していたほどだ。弱いけど、倒したあとに手に入る『竜のうろこ』が、売るとそれなりに金になるからだ。  そのドラゴンを倒したくらいで、なにをそんなに驚愕してるんだ、この姫様は。  改めて、容姿を観察する。洞窟の中にいたせいか、多少、薄汚れてはいるが、しかしその外見は麗しい。  腰まで伸びた、流れるような亜麻色の髪に、この上なく整った目鼻立ち。  絹のドレスで覆われた肢体は、細身でこそあるが、胸元だけはなかなか豊かだ。  出るところは出ていて引っ込んでいるところは引っ込んでいる、ってやつだな、うん。  って、なにを言っているんだ、俺は。  心を読めるリプリカ様がいなくてよかったぜ。  そうだ、リプリカ様。あの人はどこに行ったんだ。俺はなんでこんなところに――  と、そのときであった。 『エルドーッ!』  くぐもった声が聞こえてきた。  うわさをすればなんとやら。リプリカ様の声だ。 「あれ、でも……どこッスか! リプリカ様!」  さんざんキョロキョロする。  しかしリプリカ様の姿は見えない。  どこだ?  どこから声を出しているんだ?
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