179人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
生まれ故郷の村の近くには何体も昼間からうろうろしていたが、魔王軍の中でもきわめて戦闘力が低いモンスターである彼らは、俺や勇者アークでなくても、普通の村人でもときどき退治していたほどだ。弱いけど、倒したあとに手に入る『竜のうろこ』が、売るとそれなりに金になるからだ。
そのドラゴンを倒したくらいで、なにをそんなに驚愕してるんだ、この姫様は。
改めて、容姿を観察する。洞窟の中にいたせいか、多少、薄汚れてはいるが、しかしその外見は麗しい。
腰まで伸びた、流れるような亜麻色の髪に、この上なく整った目鼻立ち。
絹のドレスで覆われた肢体は、細身でこそあるが、胸元だけはなかなか豊かだ。
出るところは出ていて引っ込んでいるところは引っ込んでいる、ってやつだな、うん。
って、なにを言っているんだ、俺は。
心を読めるリプリカ様がいなくてよかったぜ。
そうだ、リプリカ様。あの人はどこに行ったんだ。俺はなんでこんなところに――
と、そのときであった。
『エルドーッ!』
くぐもった声が聞こえてきた。
うわさをすればなんとやら。リプリカ様の声だ。
「あれ、でも……どこッスか! リプリカ様!」
さんざんキョロキョロする。
しかしリプリカ様の姿は見えない。
どこだ?
どこから声を出しているんだ?
最初のコメントを投稿しよう!