第2章 初代勇者不在の世界で

1/6

179人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ

第2章 初代勇者不在の世界で

『ここじゃ、エルド。ここから声を出しておる』  声が聞こえるほうへ目を向けると、なんとそれは俺の右手。  そして俺の手中には、例の時の宝玉があった。 「宝玉から声が!」 『ようやく気づいたようじゃの。そうじゃ、わしは未来の世界から魔法で声を飛ばしておる。まったく、まさかそなた、初代勇者の時代に時間移動するとは……』  初代勇者の時代、だと? 『なんじゃ、気づいておらんかったのか? エルド、そなたはいま、わしらの時代から何千年も昔。そう、初代勇者アリアの時代におるのじゃ』 「な、なんですって!?」 「あのう、すみません。先ほどから、どなたとおしゃべりをされているのです?」  ルティナ姫が、鉄格子の向こうから怪訝そうな顔を見せる。  しゃべる石ころと、それに応対する俺の姿はさぞかし奇異に見えただろう。 「いや、ちょっとこっちの話で……。悪い、少し待ってくれ」  俺は時の宝玉を抱えて、洞窟の隅っこの方に移動。  ヒソヒソ声で、リプリカ様と会話を始める。 「……確かに俺、初代勇者の時代に行けたら面白いなって考えましたけど、まさか本当に時間移動するなんて」 『そういうアイテムなんじゃから、移動するのは当然じゃろ』     
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

179人が本棚に入れています
本棚に追加