第2章 初代勇者不在の世界で

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『ふむ。なにが理由かは分からんが、勇者が不在では、その世界はいずれも魔王によって支配されてしまう。それは人々にとって不幸であろう。ならば、そなたのやることはただひとつ。……そなたが勇者の代わりに魔王と戦い世界を救うのだ!』 「はあっ!?」  俺は、すっとんきょうな声をあげた。 「いやいやいや。なに言ってんスか。俺が勇者の代わりになんか、なれるわけないでしょ? パーティ最弱だったこの俺が!」 『できると思うがのう。確かにそなたはこちらの時代では実力不足だったかもしれぬ。しかしそちらならば……ザザザ……』 「え? あれ? リプリカ様? おーい、リプリカ様っ!」 『うぬ、宝玉の力が……声も飛ばせなくなるのか……! 聞こえるか、エルド。ザザザ……返事をせよ、返事を……』  宝玉から聞こえてくるリプリカ様の声は、激しい雑音混じりになってしまった。 「リプリカ様。おーい、リプリカ様ぁ!」 『ザザザ……エルド……ザザザ……』  だめだ。  もうリプリカ様と会話もできなくなってしまった。  困ったな。このままじゃ元の世界と連絡も取れなくなる。 「あのー……」 「ん? ……ああ、ごめんごめん!」  おずおずとした声が聞こえてきて、俺ははっと我に返った。  いかんいかん。鉄格子の向こうにいるルティナ姫のこと、すっかり忘れていたぜ。 「本当、ごめん。いま助けるから」  とりあえずルティナ姫を救出しよう。初代勇者アリアの代わりだ。     
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