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『ふむ。なにが理由かは分からんが、勇者が不在では、その世界はいずれも魔王によって支配されてしまう。それは人々にとって不幸であろう。ならば、そなたのやることはただひとつ。……そなたが勇者の代わりに魔王と戦い世界を救うのだ!』
「はあっ!?」
俺は、すっとんきょうな声をあげた。
「いやいやいや。なに言ってんスか。俺が勇者の代わりになんか、なれるわけないでしょ? パーティ最弱だったこの俺が!」
『できると思うがのう。確かにそなたはこちらの時代では実力不足だったかもしれぬ。しかしそちらならば……ザザザ……』
「え? あれ? リプリカ様? おーい、リプリカ様っ!」
『うぬ、宝玉の力が……声も飛ばせなくなるのか……! 聞こえるか、エルド。ザザザ……返事をせよ、返事を……』
宝玉から聞こえてくるリプリカ様の声は、激しい雑音混じりになってしまった。
「リプリカ様。おーい、リプリカ様ぁ!」
『ザザザ……エルド……ザザザ……』
だめだ。
もうリプリカ様と会話もできなくなってしまった。
困ったな。このままじゃ元の世界と連絡も取れなくなる。
「あのー……」
「ん? ……ああ、ごめんごめん!」
おずおずとした声が聞こえてきて、俺ははっと我に返った。
いかんいかん。鉄格子の向こうにいるルティナ姫のこと、すっかり忘れていたぜ。
「本当、ごめん。いま助けるから」
とりあえずルティナ姫を救出しよう。初代勇者アリアの代わりだ。
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