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俺に勇者のマネができるとは思えないけど、でもこの世界に勇者がいないなら、やってみるしかないよな。
「あの、お気持ちは大変嬉しいのですが」
「ん?」
ルティナ姫は、こちらを気遣うような眼差しで告げてきた。
「わたしをこの牢屋から救出するのは、難しいと思います。なぜならこの鉄格子には、魔王の呪いがかけられているからです。魔王本人を倒さなければこの鉄格子は決して開かないことでしょう。いくらドラゴンを倒したあなたでも、この鉄格子を開けることは……」
「呪い、か」
俺は、鉄格子をチョンチョンとつついた。
すると指先に、ピリピリと電流のような違和感が走る。
「なるほど、呪いだ」
「はい、呪いです。人間の力ではこれを解くことはできません。ですから――」
「いや、でもまあ」
俺は、ガリガリと頭をかきむしりながら、
「大丈夫でしょ、これくらいなら」
「え?」
「いくぞ。……【アブレム】!」
ばちばちっ!
がちゃん!!
……ぎぃー、ばたん。
俺が解呪の魔法を使った瞬間、呪いがかかった鉄格子は、至極あっさりと開いたのだ。
「え? ……え、え、え……?」
「な、大丈夫だったろ。さ、出てこいよ。えーと、とりあえず、君のお城に送り届けたらいいのかな?」
「な、な、な……」
ルティナ姫は、絶句している。
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