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もちろん歩いたりはしてない。そんな面倒なことできねえよ。【レターン】っていう脱出魔法を使ったんだ。
「す、すごいです。脱出魔法なんて、わたし、初めて体験しました。こんな魔法がこの世にあるなんて!」
また驚かれた。
なんでそんなにビックリしてるんだ?
俺、大したことしてないと思うんだけどなあ。
『ザザザ……脱出の魔法は、3代目勇者の時代に誕生したものじゃ。初代の時代にはないんじゃぞ、エルド……ザザザ……』
宝玉が、またなにか声らしき雑音を発している。
おそらくリプリカ様だろうけど、やっぱり、全然聞こえない。
「それより、ここはどこだ?」
目の前には岩肌と、枯れ木がポツリポツリと点在しているだけの、殺風景な世界が広がっている。どうやら山の中のようだが。
数千年の時間の隔たりはあっても、俺がいた元の世界と基本的には同じ地形のはずなんだが……。見覚えはまったくない。
くそっ、こういう時にパーティーの一軍だったらなあ。世界の隅々まで冒険してただろうから、景色になんとなく見覚えがあったかもしれないのに。
「あっ、エルド様。ご覧ください。あそこにいくつか煙が上がっております」
ルティナ姫がはるか遠方を指差した。
見ると、確かにそこには薄い煙が、いく筋か立ちのぼっている。あれは炊事の煙かな?
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