第3章 シリーズ内でも貨幣価値ってけっこう変わるもんだからね

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 もちろん歩いたりはしてない。そんな面倒なことできねえよ。【レターン】っていう脱出魔法を使ったんだ。 「す、すごいです。脱出魔法なんて、わたし、初めて体験しました。こんな魔法がこの世にあるなんて!」  また驚かれた。  なんでそんなにビックリしてるんだ?  俺、大したことしてないと思うんだけどなあ。 『ザザザ……脱出の魔法は、3代目勇者の時代に誕生したものじゃ。初代の時代にはないんじゃぞ、エルド……ザザザ……』  宝玉が、またなにか声らしき雑音を発している。  おそらくリプリカ様だろうけど、やっぱり、全然聞こえない。 「それより、ここはどこだ?」  目の前には岩肌と、枯れ木がポツリポツリと点在しているだけの、殺風景な世界が広がっている。どうやら山の中のようだが。  数千年の時間の隔たりはあっても、俺がいた元の世界と基本的には同じ地形のはずなんだが……。見覚えはまったくない。  くそっ、こういう時にパーティーの一軍だったらなあ。世界の隅々まで冒険してただろうから、景色になんとなく見覚えがあったかもしれないのに。 「あっ、エルド様。ご覧ください。あそこにいくつか煙が上がっております」  ルティナ姫がはるか遠方を指差した。  見ると、確かにそこには薄い煙が、いく筋か立ちのぼっている。あれは炊事の煙かな?     
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