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白亜の石が積み重ねられている宮殿が、すぐ目の前に見えている。振り返れば、煉瓦作りの建物の数々が城の前に広がっていた。ディヨルド城下町だ。
何千年もの時間の隔たりがあるから、俺が知っているディヨルドの街並みとは全然違うが……。
しかしなんていうか、空気だけは似ている気がするな。時間の壁はあっても同じ場所だもんな。
「い、いまのも魔法なのですか? エルド様……なんと……すさまじい……」
で、ルティナ姫はまだ双眸を見開いて驚愕している。
「いまのは瞬間移動の魔法【ローベ】だ。自分か、もしくは仲間のうちのひとりが行ったことのある場所ならすぐに移動できる魔法なんだ」
「す、すごい……。やはりあなた様はとてつもなくすごいですっ!」
「なんでそんなに驚いてるのさ。ぜんぜん大したことはないのに。【ローベ】の使い方としては初歩的なものだし」
「エルド様……あなた様は、なんという謙虚な……」
俺は本音を言ったんだけどなあ。
ま、とにかくこれで王宮に姫様を送り届けることができた。あとは王様に姫様を渡せばそれだけで――
「待て、そこの怪しい者!」
「ん? ……え!?」
俺はびっくりした。
なぜなら、背後から突然声をかけられて、振り返った瞬間、銅の剣の切っ先を突きつけられていたからだ。
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