第5章 だから王様ってケチだったんスか

1/9
前へ
/114ページ
次へ

第5章 だから王様ってケチだったんスか

「魔王だ! 魔王の手先が――魔族があらわれたぞ!」 「皆のもの、集まれ! 魔族をこの場から叩き出すぞ!」  わらわらと、皮の鎧を着込んだ兵士たちが集まってくる。  そして彼らは銅の剣を引き抜いて、俺に突きつけてきた。  ……なんだあ?  魔王の手先、だと? 「待て待て、どういうことだ。俺は魔法戦士エルド。見ての通り人間だぞ」 「黙れ! その手に乗るか!」  何十人と集まってきたお城の兵士の中から、一人、細身の剣――レイピアをたずさえた女が出てきた。  セミロングの金髪を、一つ結びの、いわゆるポニーテールにした、10代後半の女の子である。布地の長袖長ズボンの上に、鉄製の胸当てをつけている。彼女だけ少し装備がいいな。  しかしいかにも生真面目そうな、キリッと引き締まっている整った顔立ちだ。  だが険しい眼差しを俺の方に向けている彼女は、白桃色のくちびるを動かして叫んだ。 「お前はいま、突然我々の目の前に現れた。そんなことができるのは魔王の手先だけだ!」 「そうだそうだ! アイネス様の言う通りだ!」 「さすがはアイネス様、王宮付きの騎士(きし)だ。抜群の見識だ」 「みんな、油断するなよ。こいつは魔王の手先だ」     
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

178人が本棚に入れています
本棚に追加