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第5章 だから王様ってケチだったんスか
「魔王だ! 魔王の手先が――魔族があらわれたぞ!」
「皆のもの、集まれ! 魔族をこの場から叩き出すぞ!」
わらわらと、皮の鎧を着込んだ兵士たちが集まってくる。
そして彼らは銅の剣を引き抜いて、俺に突きつけてきた。
……なんだあ?
魔王の手先、だと?
「待て待て、どういうことだ。俺は魔法戦士エルド。見ての通り人間だぞ」
「黙れ! その手に乗るか!」
何十人と集まってきたお城の兵士の中から、一人、細身の剣――レイピアをたずさえた女が出てきた。
セミロングの金髪を、一つ結びの、いわゆるポニーテールにした、10代後半の女の子である。布地の長袖長ズボンの上に、鉄製の胸当てをつけている。彼女だけ少し装備がいいな。
しかしいかにも生真面目そうな、キリッと引き締まっている整った顔立ちだ。
だが険しい眼差しを俺の方に向けている彼女は、白桃色のくちびるを動かして叫んだ。
「お前はいま、突然我々の目の前に現れた。そんなことができるのは魔王の手先だけだ!」
「そうだそうだ! アイネス様の言う通りだ!」
「さすがはアイネス様、王宮付きの騎士だ。抜群の見識だ」
「みんな、油断するなよ。こいつは魔王の手先だ」
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