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俺が軽く左手を振った瞬間、アイネスが持っていた剣の先端が至極あっさりと折れ、横に向かって吹っ飛んで、そのまま地べたに突き刺さった。
あ。
やべ。
折っちゃった。
「な……なに? え? わ、私の……はがねのレイピアが……? まさか、素手で……? あ、ありえない……」
「悪い。まさか折れちまうなんて。軽く叩いただけのつもりだったんだけど……」
うわー、しくった。これは弁償だな。いくらするんだ、このレイピア。
まあ、こんなにあっさり折れるんだから、大した値段じゃないと思うけど。
……って。
あれ? なにこの空気?
アイネスをはじめ、兵士たちは全員唖然とし、何か化け物を見るような目で俺のことを見ている。
俺、なんかそんなに驚かれるようなことしたかな?
「け、剣を折りやがった」
「し、しかも素手で……?」
「あれ、アイネス様のはがねのレイピアだろ? それをあんなにあっさりと……」
何をそんなに驚いてるんだ?
はがねのレイピアを折るくらい、俺の仲間なら誰でもできる。全然大したことじゃないのに。
「まあまあ、さすがはエルド様! 本日も絶好調のようで何よりです!」
「え。あ、ああ……」
ルティナ姫は、呆然としている集団の前でただ一人ニコニコ顔だ。
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