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年を取ってからようやく授かった一人娘、ルティナ姫のことを溺愛していたらしい王様は、それだけに娘がさらわれたことを心の底から悲しんでいたらしい。それが今日、ルティナ姫が戻ってきたものだから、1か月ぶりに笑顔を見せたそうだ。で、王様が笑顔になったもんだから、城の大臣や家来、兵士たちも喜びの表情を見せている。よかった、よかった。
「エルドよ。おぬしこそ、我が国に現れた救世主じゃ。頼む。魔王を倒してくれい」
「もちろん、そのつもりッスよ」
この世界に現れるべき初代勇者がいないのだ。
それなら、俺がやるしかなさそうだもんな。
「頼もしい言葉じゃ。エルド、頼むぞよ。――う、ごほ、ごほごほっ!」
「お父様! ああ、こんなに病が深刻になって……。回復魔法も効かないし、どうしたらいいのかしら」
「おそれながら、姫様」
と、口を開いたのは例の生真面目女騎士ことアイネスだった。
「この城の北西にある【王家の墓】の最下層には、どんな病もたちどころに治してしまう『癒やしの杖』があると聞きます。その杖を持ってきてはいかがでしょう?」
「ごほ、ごほごほっ! アイネス、いかん、それはいかんぞ。……【王家の墓】はその名の通り、我がディヨルド王家が7代前まで使っていた墓じゃ。その入り口には厳重な封印が施されていて、王家の者以外は立ち入りできぬ。よって、洞窟の中に入ることができるのはルティナだけじゃが……。
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