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第3章 シリーズ内でも貨幣価値ってけっこう変わるもんだからね
さて、とにかくこんな薄暗い洞窟から脱出するか。
ルティナ姫も、1ヶ月だっけ? こんなところに監禁されていたんだ。
相当くたびれているだろうし、まずどこかで休ませてあげないと。
「……あの」
「ん?」
「改めて、お礼を言わせてくださいませ。ありがとうございます。助かりました。わたしはルティナ。ディヨルド王国の第一王女でございます」
ディヨルド王国……。
のちの時代では俺たちパーティーの旅の拠点だった国だ。
この時代でも、初代勇者の冒険はディヨルド王国から始まるはずだが。
その初代勇者アリアはこの世界にいないらしいんだよな。ほんと、なんでだろ。
とにかく、笑顔を見せるルティナ姫に向けて、俺はひらひらと手を振った。
「いいってことよ。俺、そんなに大したことしてねえし」
「ご謙遜を。……あっ、そういえばまだあなた様のお名前を頂戴しておりません。よろしければ、どうかお教えくださいませ」
上目遣いにこちらの名前を尋ねてくるルティナ姫は、湿っぽい洞窟の中でさえ、なお美しかった。
「……エルド。魔法戦士エルドだ」
「ひゅっ!」
「きゃっ!」
というわけで洞窟から脱出した。
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