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怒りが腹に溜まるような感じに拳を握ったゼロスを見て、ファウストがふっと笑う。それは、なんだか羨ましそうでもあった。
「あまり怒るな、ゼロス。あいつにとってもお前は初めての恋人なんだろう。元々面倒見が良くて心配性な所がある。これが恋人ともなれば、囲ってしまいたいと思っても不思議じゃない」
「冗談じゃありません。俺は男で騎士です。実力であの方に追いつかないのはもう仕方がないと思っていますが、それでも自分に出来る仕事を放棄したり、縋ったりするのはプライドが許しません。囲うなんて、やろうとしたら別れます」
「勇ましいな。まぁ、だからこそあいつを支えられるんだろう。これからも、あいつを頼む」
最後に一度、ポンと頭を撫でたファウストが「一応アシュレーを補佐でつける」という、実に恐縮することを伝えてくる。
案外長くなった報告を終えて出る頃には、日暮れの早くなった空が茜色になっていた。
暗府の協力で屋敷の様子が分かった。人の出入りはないが、人の気配はあるそうだ。
それを踏まえて最終確認の為、ゼロス達実動隊全員とオーウェン、そしてサポート指揮のアシュレーが周囲の地図を囲んだ。
「屋敷の出入口は表と裏の二カ所。第一陣は俺とオーウェンさん、ボリス、レイバンで突入し、屋敷の中にいる奴等を外に出す」
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