神殺し(ゼロス)

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 オーウェンの視線の先。そこにあるのは金の女神像と黒い装丁の本。女神は頭からヴェールを被っていて、一見貞淑に見える。だがその顔や手には鱗のようなものが彫られている。そして、右目がなかった。  オーウェンはそれらを持つと部屋を後にし、談話室の暖炉に火をくべる。そして両方に聖水をかけると、炎の中にくべてしまった。 「信仰を伝える書物と、信仰の中心にある神を滅する。これが、神殺しです」  残りは全て捕らえられ、四人の子供の誘拐殺人で牢に放り込まれる。この神を祀る者はなくなり、神は消滅する。これが神殺しなんだと、オーウェンは教えてくれた。 「案外あっけなく終わってしまいましたね。これでも僕の最後の仕事だったのに」 「最後?」 「これが終わったら僕、ランスロット義兄様の護衛兼補佐として付くことになっているんです。僕を貶めたこいつらだけは絶対に滅すると言ったら、探し当ててくれましてね」  このぶっ飛んだ人が、枢機卿の護衛と補佐……大丈夫なのか?  思うものの親族同士。教会が真っ当な方向に進む事だけを願っている。 「ゼロスくん」 「はい」 「最後まで付き合ってくれてありがとう。それと、ランバートの事も。大事に思ってくれて、嬉しい。これからもあの子をよろしくね」  寂しげで、他人事。余程痛い顔をするオーウェンを前に、ゼロスは思わず口を開いた。 「このままあいつと会わなくて、いいんですか?」     
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