390人が本棚に入れています
本棚に追加
冷たく痛い石の床。後ろに押し当てられた幼い昂ぶり。それは確かに恐怖だった。
けれど、前のように飲まれていない。「怖い。止めて」と叫ぶ自分の更に奥に、冷静な自分がいる。
それでも当時の自分の感情は伝わってくる。恐怖。けれどその奥にあるのは混乱だ。信じていた、大好きだ。だからこそ、怖いと叫んでも止めてくれないこの行為に戸惑い、悲しい気持ちがある。
でもやっぱり恨みなんてない。憎しみなんてない。これは明らかな強姦なのに、俺はこの人の事を嫌いだなんて思っていない。
押し当てられたものが、グッと力を込めてこじ開けようとする。走る痛みは裂けてしまいそうなものだった。
ダメだ、叫ぶな。今声を上げたら大変な事になる。我慢しろ。我慢しなければならないのに!
言いようのない焦りが俺の中にはあるのに、記憶は変わらない。痛みに耐えられない。悲鳴を上げたその声に、ドアが開いて人が雪崩れ込んでくる。
「何をしている!」
入って来た男が無理矢理――兄ちゃんを引き離そうとしている。けれど兄ちゃんはそれを拒んだ。俺の中にある熱が締めつけに大きく育つ。
「この、クソガキ!」
「っ!」
最初のコメントを投稿しよう!