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『死にたくない』『オレガワルイ』
『誰か、誰か助けて!』『ダレモタスケナイ』
『死にたくない!』『ジャアドウスル』
――殺サレル前ニアイツヲ殺セ!
手に触れた尖った枝を俺は握った。そして、何も考えずただがむしゃらに走った。
男は気付いていた。けれど兄ちゃんの首を絞めながら腰を振っていたから、動けなかった。
脇に枝を構えたまま体当たりした瞬間、手が熱く濡れた。鶏皮をフォークで刺したみたいな一瞬の抵抗と、突き抜けた柔らかい感触が手に生々しく伝わってくる。
男が俺を見た。その目は大きく見開かれて、憎悪と怒りがない交ぜになっていた。
「何しやがるクソガキぃ!!」
「ぐっ!」
容赦ない拳が俺の頬を殴りつけて、俺はちょっと飛ばされた。痛くて痛くて、口の中に血の味が溢れてくる。
男が兄ちゃんを離して、俺の方にきた。血走った目と、口の端を伝う血と。
殺される。殺される!
必死で手を伸ばして、俺は光る物を握った。そして、飛びかかる男に無我夢中で手にした物を突き出した。
「がぁ……あが……」
それは、兄ちゃんの目を抉ったナイフだった。それが男の胸に根元まで埋まった。男は俺に覆い被さるように倒れて、数度痙攣する。
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