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ファウストがベッドに腰を下ろし、正面から抱きとめてくれる。その腕の中が温かくて、ランバートは子供みたいに泣いていた。
暫くそうして心のままに泣いたら、スッキリとした。背を撫でる手の心地よい動きに甘えて、そうして次には体を離して、ファウストを正面から見た。
「俺、オーウェン兄ちゃんに謝らないと」
「大丈夫か?」
「うん」
王都で会ったのは、大人びていたけれどオーウェンだった。それなら何処かにいるはずだ。許してもらえないだろうけれど、謝らないといけない。謝罪なんかじゃ足りないけれど。
ファウストは数度背中をトントンと叩いた後で立ち上がり、手を差し伸べてくれる。首を傾げて見上げると、困った笑みを返してくれた。
「あいつの居場所を知っている。案内する」
「知ってるって……」
どうして? そう問おうとしたけれど、止めた。自分が倒れた事でファウストが探したのかもしれない。そう思ったから。
伸べられた手を取って、立ち上がる。スッキリと立つ事が出来て、ほっとした。
「エリオット、いいな?」
「……仕方がありませんね。そのかわり、ちゃんと帰ってくることです」
溜息をついたエリオットの許可も出て、ファウストの背を追った。
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