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やっぱり、これがいい。一人の時間、何もできなくて色んなものが抜け落ちてしまったみたいだった。皆が忙しいのに自分だけ何もできなくて、それも苦しかった。
フリムファクシに跨がったファウストが手を差し伸べ、ランバートを上げてくれる。そうして向かったのは、郊外の森の中だった。
夜の森は記憶の中に似ていた。暗く深く、色んなものを飲み込んで隠してしまいそうだ。
「……ファウストは、俺の事知ってたのか?」
倒れてもあまり焦らなかったファウストを、今思えば不自然に感じる。何も知らなければきっと大焦りなんじゃないかと思う。風邪で倒れても大騒ぎなんだから。
ファウストはバツの悪い顔で、道中事の次第を話してくれた。事件の事、そこでオーウェン会って話をしたこと。
自分も知らなかった事をファウストは知っていて、見守っていた。話してくれればよかったのにと思う反面、自分で取りもどさなきゃいけなかったんだとも思う。それに、ファウストがしっかりと構えていてくれた事で安心したのも確かだ。
「悪かった」
「ううん。こっちこそ沢山迷惑かけてごめん」
申し訳無く謝るファウストを見上げ、ランバートは緩く笑った。
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