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伸べられた手に掴まって立ち上がり、そのままベッドに。今日はきっと激しいだろうと入念に準備をした。すぐにでも繋がれるようにしてきた。
だがローブを解かれ落とされ、自らも脱いで雪崩れ込んだ布団の中で、ファウストはただ優しく抱き寄せるだけ。これに、何故かランバートの方が焦った。
「あの……しないの?」
「する」
「でも」
「今日は俺に任せろ」
そう言って額にキスをする。優しく、むずむずする行為に目を細めたランバートは抱き込まれる胸に甘えて身を寄せた。
「ファウストの匂いがする」
「ん?」
「俺さ、ダメになってる間これに助けられたなって」
毎日落ち込んでいた。なにも上手くいかなくて、焦りばかりが心の中を満たして、このままだったらどうしようと不安ばかりだった。
けれど毎日ファウストが抱きしめて、大丈夫だと言ってくれて、それに励まされた。それがなかったら、逃げていたんじゃないかと思う。
「自分の事に向き合う勇気を、貰っていた。拒んだのに、一緒にいてくれて嬉しかった。有り難う」
「流石にあれは辛かったぞ」
「ごめんって。でも、もう大丈夫だと思う」
見た物はあまりに醜く怖く心を竦ませた。アレを忘れたからこそ、誰かと結ぶ事ができた。そうじゃなければ今頃、誰を信じる事もできなかっただろう。
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