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プッと頬を膨らませてみせるチェルルの後ろから腕が伸びて、当然のようにハムレットが抱き込む。余程嫌だったのか、まだ怒った顔のままだ。
「ランバート、お帰り。ねぇ、聞いてよあいつさぁ」
「ハムくん、あいつはないんじゃない?」
「もぅ……オーウェンやっぱ嫌い! いっつも僕の大事なもの持ってくんだもん! ランバートも!!」
「大げさだ、愚弟」
アレクシスが大げさに溜息をついている。その隣ではとてもおっとりとした、優しげな女性が面白そうに小さく笑っていた。
「あれ、エレノアさん?」
「ふふっ、ランバートさん、お久しぶりですわ」
ランバートは彼女に向けて首を傾げる。彼女とは久しぶりに会った。
腰まである金色の髪に、大きな緑色の瞳の優しげな女性はこの場にあまりそぐわない、可憐で清純な人物である。
だがどうして、彼女もまた侮れない人物である。
「ところで、お隣にいらっしゃるのはランバートさんの伴侶ですわよね?」
「!」
おっとりと花のように微笑む人は、そのくせ他人のプライベートを蜂のように刺すのだ。
「ランバート、諦めた方が早いんじゃない? その人、俺のメンタルも穴だらけにしたよ」
「お前、どうして平気な顔してるんだチェルル」
「諦めたら楽になった」
あっけらかんと宣ったチェルルの潔さはある意味男だろうな。
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