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素直に胸元に身を寄せれば逆に驚かれる。なんだ、説教待ちなのかこの人は。
「精神的に疲れました。人の闇って、見るものじゃありませんね」
オーウェンが見せた狂気。あれに昨日は散々当てられた。その余波が今日もあるのだろう。
あんな人は騎士団では見た事がない。皆それぞれ、何かしらを抱えてここに居るんだと思う。けれどここに居る人はどこかカラッとしていて、ドロドロとした感情を見せない。
クラウルは困ったように笑った。あの教会の地下室を最終的に綺麗にしたのは、暗府らしい。
「確かに、強烈な現場だったな。家畜の血だが、あれだけ置いてあれば相当臭う。床もなかなかだったな」
「家畜の血だったんですね。良かった」
あの人の狂気に当てられた時には本当に人の血かと思った。そのくらい、飲まれていたのだろう。
「あの全部が人の血だとするなら、大人一人分くらいか。流石に許容できないな」
「止めてくださいよ。あの人、本当にやりかねませんよ」
相手が邪教の徒であればその位の責め苦はしそうだ。
溜息をつくゼロスを座らせたクラウルがグラスを置く。ゼロスは「今日は赤飲めません」と伝えると白を出してグラスに注いだ。
「なんかもう、しんどいです」
「相当当てられたな。お前は暗府にはむかない」
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