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「まるで悪魔崇拝じゃ」
「悪魔崇拝?」
聞き慣れない言葉にファウストは首を傾げる。三十年近く生きているが、そのような者達がいるという話を聞かない。本では読んだ事があるが。
シウスは静かに頷く。そして、哀れな被害者に十字を切った。
「悪魔を崇拝し、生け贄を捧げる事で願いを叶えてもらう。そういう目的で怪しげな儀式をしていた時代があった。そうした者達が生け贄に好むのが、血や心臓じゃ」
「本では読んだ事があるが、聞いたことがないぞ」
「当然ぞ。現在は教会が固く禁じており、犯せば罪となる。取り締まりも厳しい事から、今ではおいそれとそのような事をする者はおらぬ。こんな派手な事、しかも死体を教会の墓地に放置するなど、とても出来ぬのだよ」
ではこの犯人は余程捕まらない自信があってこんな大胆な事をしたのか。
何にしても、面倒な事がまた起ころうとしている。ランバートの事も心配だというのに、厄介な事が重なっていく。
気苦労の絶えないファウストは溜息をつき、軽く頭を振った。
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