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「それは幸いです。俺、知りませんでしたがこういうの苦手だったんですね」
大抵の事は平気だと思っていたが、そうではなかったらしい。尋問という名の拷問は見ているだけで寒気がした。
クラウルは笑っている。そういうこの人も仕事などでは闇が多そうだ。
「クラウル様も、闇が多いですか?」
「ん?」
グラスを傾けたクラウルの視線がゼロスに止まる。次には肯定する様な苦笑だ。
「知られたくないことは多いな」
「知りたくないので聞きません」
「それは幸いだ、なにせ後ろめたい事も多い。闇ではないが、隠したい事だな」
「正直なんですね」
「隠し事をしている事を隠したくない、なんて面倒な言葉になるが。だがお前には極力正直でありたいと思っている」
確かに面倒臭い言い回しだが、言いたい事はわかる。仕事上言えない事も多い立場なのだから、それを探るのは意地悪だ。
グラス一杯分のワインを貰い、ゼロスはクラウルの肩に凭れる。今日はとにかく気力が切れた。
クラウルは倒れないように肩を抱いている。したいようにさせてくれるこの人の側で、ゆっくりと気力は回復していく。
「ゼロス、疲れているなら寝るか?」
「しないんですか?」
「いや、思ったよりも疲弊しているから」
「疲れてると妙にムラムラする事って、ありませんか?」
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