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「俺にはこの中に、あんな凄惨な事件を起こしている人物がいるように見えないんだが」
「あはは、僕にも見えません」
「な!」
何か見分ける方法でもあるんだろうと思っていたのに、あっけらかんとオーウェンが言ってのけるのにゼロスは目を見張った。そして次にはジロリと睨み付けた。
だがオーウェンには何かしらの確信があるのか、じっと参列者を見ている。
「教会にいる子供達は、案外大人を見ていて、警戒心が強いんですよ」
「?」
突然静かな声で話し出すオーウェンに首を傾げながらも、ゼロスはただ静かに聞いた。言葉を挟んではいけない雰囲気がある。オーウェンの目はどこか遠くを見ているようだ。
「彼らは大人が嘘つきで、時に自分達を傷つける存在であるのを知っています。こうして教会に来る子もいるので」
「それなら、大人について行く事はないのではありませんか?」
「はい、普通なら」
この「普通なら」に首を傾げ、オーウェンの視線を追った。そして彼らがとある集団を注視している事に気付き、目を見開いた。
「彼らが唯一信じている人間。自分達を守り、育て、慈しんでくれる人」
「まさか……」
「犯人はシスター、もしくは神父の格好をして子供に近づいています」
それは確信を持った言葉だった。この考えに間違いはないと断言している。
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