390人が本棚に入れています
本棚に追加
実に鮮やかな手際で女を縛りあげたオーウェンは、二人を教会に運び込むように言う。どうやらこの教会には地下に部屋があるらしく、そこは声が外に届かないそうだ。
「騎士団ではダメなのですか?」
「悪魔払いですから」
「……儀式めいたことをするということですか?」
「表向きは。まぁ、実際は尋問という名の責め苦ですけれどね」
最後は呟くようだったが、確かに聞こえた。そしてオーウェンの瞳は深い闇を宿すような、冴え冴えと、でも暗いものだった。
地下の部屋は表向きは災害時などのシェルターとなっている。実際厚みのある石造りに、鉄製の扉がついている。これなら声も聞こえないだろう。
そこにある椅子に男を括り付けたオーウェンは実に楽しそうな笑みを浮かべている。そして手には小さな陶器の小瓶を握っていた。
「さて、お聞き致しましょう。貴方達のアジトはどこでしょうか?」
とても静かな声音だが、微妙に嬉しそうでもある。そのちぐはぐさを不気味だと思いながらも、ゼロスは黙って見ていた。
当然のように男は黙りを決め込んでいる。下から睨み付けるような表情に、オーウェンは更に笑みを深めた。
「仰いませんか?」
「当然だ」
「では、魔払いをしなければなりませんが」
「好きにするといい。この身は神に捧げたもの、苦痛などには屈しない!」
「そうですか、残念です」
最初のコメントを投稿しよう!