白衣の死神(ファウスト)

1/13
386人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ

白衣の死神(ファウスト)

 流石に、眠れなかった。  拒絶がこんなにも苦しいとは、想像以上だった。しつこいとか、そういうのではない。根本的な強い拒絶だった。あれではまるで、殺される被害者の顔だ。  今は隣で眠っているランバートを抱きしめたまま、痛む胸を一人宥めている。何が彼をこんなにしているのか、正体の見えないものでは対処ができない。犯人がいることなら、いくらでも退けてやれるのに。  翌朝、目を覚ましたランバートはやはり泣きそうな顔をした。何度も「ごめん」を繰り返して、なかなか顔を上げられなかった。  そんな姿を見るのが、苦しかった。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!