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「もー! 鬼塚先輩、なんでいつも私に催促するんですか。他の人のが上手いのに」
「んなこと言われても、俺にはお前のが一番美味そうに見えんだから仕方ないだろ。別にお前が作ったもんだからってわけじゃない」
鬼塚が言うように笹本はこの家庭科部の中でも、別段調理が上手いわけではない。むしろ上手くなりたくて入部した口だ。
他の調理台で調理をしている先輩達の方がよっぽど上手いし、味もお墨付き。鬼塚は笹本の言葉にちらっと横目に他の部員達を見る。
「それに差し入れ差し入れって。先輩、囲碁部じゃないですか。運動部じゃないんだから差し入れなんて必要ないですよね」
じとりと睨みつける笹本をハッと鼻で笑うように息を吐き、小馬鹿にしたように薄く笑みを浮かべてその小さな背中を見下ろす。
「ばっかだなあ、囲碁は頭が疲れるんだよ。糖分補給が必要なのは同じ」
「なら最初から自分で何か用意しておけばいいじゃないですか」
「お・れ・は! お前の作ったものが食いたいの! じゃないと何のためにわざわざここまで来たか分かんねえだろ」
「さっきはお前が作ったもんだからってわけじゃないだとか糖分補給って言ってたくせに」
「……あ」
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