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窓の縁に両手をつきながら前のめりになり、目を細めて強調するように声を荒げて言う鬼塚。
至近距離からの大声にびくっと肩を震わせながら、僅かに顔を鬼塚にも見えるよう横に向けて視線だけを合わせて淡々と告げる笹本の言葉に間抜けな声を漏らす鬼塚。
声だけでなく表情までもポカンとして間抜けなものになっていた鬼塚に、今度は笹本が小さくフッと鼻を鳴らす。
「先輩、ちょろいですね」
「う、うっせーな! 他の奴にやるくらいなら俺が食うっつってんだよ!」
「素直に欲しいって言えばいいのに。……はい、今日の差し入れ。クッキーです」
「クッキー?」
顔を真っ赤にして吠える様からは怖い印象など欠片もない。そんな彼に笹本はずっと自身の身体で隠していた手のひらサイズの包みを手渡す。淡いピンク色の和紙で出来た袋に黄色のリボン。
大柄な鬼塚の大きな手の中にあるそれは、笹本が持っていたときより随分と小さく見える。
「中、見てみてください」
「中? ――あ、これ」
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