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言われて鬼塚がそっとリボンをほどいて広げると、中には囲碁の碁石のように白と黒の丸いクッキーが何枚も入っていて、鬼塚は目を丸くする。
だが直後、これににやりと勝ち誇ったような笑みを浮かべると、鬼塚は左手に乗せたクッキーの包みを見せつけるように高々と持ち上げてふざけたように言う。
「碁石のクッキー? 何だよ、お前だって最初から俺にやる気満々だったんじゃねえか。お前こそ、もっと素直になった方がいいんじゃないんですか?」
「う、うるさいですよ! さっさと食べて部活に戻ったらどうですか?」
今度顔を真っ赤にしたのは笹本の方だった。渡すものは渡したぞと言わんばかりにぷいっとまた背を向けて、まるで追い払うようにひらひらと手を振る。
先輩に対するその態度にムッとすることもなく、鬼塚は真顔で手の中のそれをじっと見つめる。
「いや、もったいないだろ。こんな、俺のためだけに作ってくれたやつなんて。……帰ってからゆっくり食うわ」
「それじゃあ、差し入れになんないじゃないですか」
「いいんだよ。お前に会うことが、俺の糖分補給なんだから」
「――っ、早く部活行っちゃえ! 先輩のばかっ!」
「はははっ、ありがとな笹本。また明日もよろしくー」
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