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なんでもないことのようにさらりと言われた言葉に勢いよく振り向いては、恥ずかしさのあまり目をぎゅうっと強く閉じながら叫ぶ。顔を真っ赤に色づかせて。
鬼塚はそんな笹本に楽しそうに、けれども嬉しそうにそう言って笑うと、そのまま自分の部室に帰っていく。
騒がしい男がいなくなり静かになった家庭科室では、部員みんなが笹本を見ている。
笹本は開けっぱなしになっている窓を閉めようと窓際まで近付き、先程まで鬼塚が触れていたところに触れながらそっと窓から顔を出し、鬼塚が歩いていった方向を見る。
無言の視線の先には、ピンク色の包みを嬉しそうに見つめながら渡り廊下を歩いている鬼塚の横顔があり、そんな表情を見てしまった笹本も頬を鬼塚の持っている包みと同じ色に染めて、誰にも気付かれないようにその唇に笑みを作る。そのまま見えなくなるまでその横顔をただ見つめていた。
「素直じゃないのはお互い様だね」
「ほんと、それ!」
「もうっ! 先輩達までからかわないでくださいよ!」
鬼塚の姿が渡り廊下の向こうに消えるのを見届けると、背後から聞こえる先輩達からの声に反論しながら、笹本はそっと窓を閉めた。
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