あの人とのこと

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あの人とのこと

 その朝、私の身体は泥のように重く、激しい頭痛がして、吐き気が止りません。目を開ける元気も無く、私はベッドに横たわっていました。とても寒い。  頑張って体を持ち上げようとすると、胃から何かが込み上げて吐きました。ピンクのベッドに黄色い液体がかかりました。  私の嘔吐した音に気付いて、眠っていたあの人が近寄って来ました。あの人は青ざめた顔で私を覗き込みました。私の激しく上下する腹を撫でるあの人の掌から暖かい体温が伝わりました。 「梅ちゃん」  あの人が私の名を呼ぶので、私はいつものように、「にゃお」と返事をしましたが、声になりませんでした。  あの人は泣き叫ぶように私の名前を呼びました。 「梅ちゃん、梅ちゃん、行かないで」  周りの視界が暗くなり、意識がぼんやりとしてきました。口を大きく開いて、息をするのですが、体の中に空気が入って来ません。喉が渇いて水を飲みたかったのですが、体は全く動きません。  喉が熱い大きな塊にふさがれ、私は苦しさのあまり思わず叫び声を上げました。一瞬、空気が流れると同時に、手足が勝手に痙攣し、その後、目の前が真っ暗になり、体が浮き上がりました。     
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