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「いや……違う」
言いかけた俺を押しのけ、愛華が喋る。
「本橋さんはぁ、愛華の元カレだったの! 愛華の3才年上の31才! 数年ぶりに本橋さんから連絡が来てぇ、それでぇ、愛の縦読みメールをぉ、貰ってのぉ復活愛? キャッ! もう結婚秒読み? なの! 住んでる所はぁ、愛華のオウチ! 毎晩ラブラブなんだからぁ!」
だーーーーーーっ!
誤解を生むような発言はよしてくれーーーーーっ!
オマエに連絡取ったのは、無職宿無し所持金48円だった俺が切羽詰まったからだ!
ふと野宿の公園で思い付き、痩 せ て い た 頃 の、愛華のヌード写真で脅迫しようとしたからだし(って、コレは絶対言えないけど)、メールの縦読みは負のミラクルだ!
結婚は全然秒読みじゃねぇし、愛華と一緒に住んでるのは『社員寮は愛華のマンションよん!』って強引に連れ込んだんだろうがーーー!
毎晩ラブラブってのも、どこがどうしてそんなポジティブシンクになるんだか!
部屋、違えし!
毎晩、俺の部屋に侵入しようとする愛華対策で内鍵つけたし!
超クリーンな関係だし!
雇用主と従業員の関係だし!
愛華のマシンガントークが炸裂し、中々口を挟めない俺だったが、なんとか誤解を解こうと頑張るも惨敗。
あーもーいーやー。
ここまで言い切られると、愛華と結婚した方が良いような気にもなって……こねえわ!
「そっか! 愛華が幸せだとアタシもマジ嬉しいわ! つーか本橋さん、愛華を泣かせたりしないでよ? 愛華はアタシの癒しなんだからさ!」
顔は笑ってるけど目がコワイ弥生さんに釘を刺された。
なにか言わねばと思った矢先、「とりあえずビールよろ!」と威勢の良いしゃがれ声に中断される。
「本橋! つげ!」
と、ものの数分で呼び捨てにされた俺は、「どぞ……」と瓶ビールを傾けた。
初対面の知らないオンナに呼び捨てか……と思ったのは一瞬で、生まれ持っての女王様体質であろう、弥生さんなら仕方がないかという気にもなる。
「彩はなに食べてるの?」
グーグーと腹を鳴らす弥生さんは、彩さんのオーダーを参考にしながら、大量の料理を注文し始めた。
だがこの女王様は舌がお子様なのか、「唐揚げ! 鳥の唐揚げが食べたい!」と大騒ぎだ。
ヨシ!
ホッケ同様、唐揚げなら難易度は低い。
俺様の揚げ物テクを見くびるななよ!
美味いと言わせてみせるから!
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