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笑いの波がおさまって、俺はチビリチビリとソルティドックを舐めながら、再開された有刺鉄線デスマッチの(女子トーク)壮絶な試合を観戦していた。
「だっからさー! そんなオトコやめちゃいなよ!」
タバコの煙をプッハーと吐き出しながら彩さんが言った。
それに対し反応したのは弥生さんで、
「キライになれるなら、とっくになってるっつーの! アタシだってさ、ちっとも振り向いてくれないオトコ追っかけてんのやだよ! でもさぁ、好きなんだもん……こんなに好きになった男は他にいないんだもん……」
前半強気に答えるも、後半は瀕死の兵隊ばりに弱々しい。
「かーーっ! そんなに好きなのかーーっ! マジか……よほどイイ男なんだな」
「うん! めちゃくちゃイイ男だよ! 髪がクシャクシャで、大きなタレ目で、唇がいっつもガサガサ! もちろんカッコイイだけじゃない、優しくて強いんだ。仕事で戦闘になった時なんかいつも守ってくれてさぁ」
クシャクシャのガサガサ……見た目は大した事なさそうだな。
それより……戦闘になった時? とか言ってなかったか?
仕事中に戦う?
はいぃ?
弥生さんって仕事なにしてるんだ?
警察官?
それともセキュリティ関係?
「あーあーあー、なるほどねー、強くて守ってくれるとかマジ反則だわ。そんなんされたら惚れるわ」
ワーカールー!
「でっしょーーー! しかもさー、お喋りしてても話が尽きないんだよ。何時間でも話してられる。感覚が似てるんだよね、オマエはアタシか? っつーくらい!」
それもワーカールー!
「ツーアウーーーッ!! はい! アウト2つキターーーー!! それさ、女が一番ハマるパターンのヤツ! 強くて守ってくれる? 気が合いすぎるくらい合う? それだけでもドハマリするわっ!」
キャー! ワカルワカルー!
「だよね? だよね? アタシがいつまでも好きなのわかるでしょ!? もう寝ても覚めてもアイツの事で頭がいっぱい! あ、本橋! カラアゲ追加ね!」
うぉっ!
びっくりしたわ。
試合中にいきなり追加オーダーだもんな。
女って喋りながら、別の事も同時に考えられるとかマジスゲェ。
……でさ、さっきから愛華のヤツ「ワカルワカルー!」って合いの手入れてんだけど、ホントか?
でもってそのたび俺をチラチラ見るのはやめてくれ。
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