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ジュゥゥゥ!
パチパチパチパチ!
女王様の追加オーダー。
衣をつけた鶏肉を油の中で泳がせる。
つーかスゲェな。
さっきのカラアゲだってほとんど一人で食べていたのに、まだ食べるのか。
高カロリーな揚げ物だぞ?
女は「太っちゃうー」とか気にするもんじゃないのか?
気にしないのは愛華だけだと思ってた。
コイツはいつでもよく食べる。
今日なんて朝からカツ丼だったしな。
「ねぇ、彩、愛華。アタシ……辛いよ。大好きなのに振り向いてもらえない。もうね、遊びでいいから、一度でいいから抱いてほしいと思うのに、絶対に手を出してこないんだ、」
だっ!!!
い、今、なんて言った!?
抱いてとかなんとか、スゴイコト言わなかったか……!?
さすがは有刺鉄線デスマッチ……ハンパねぇ大技が出た……!
俺は油の音で聞こえなかったふりをして、無表情をキープするが内心はドキドキだし、相手の男を呪いたくもなった。
こんな美人に「遊びでいいから」なんて言わす野郎は、揚げたてのカラアゲで口の中ヤケドすりゃあいいんだ。
一週間はヒリヒリしてメシもまともに食えねぇくらいになっ!
「あ゛ーーーーーっ!! ワーカールー!! ワカリすぎるぅぅぅ!!」
ウォォォッ! と獣の雄叫びで泣き出したのは、弥生さんでも彩さんでもない、愛華だった。
前回同様、水道の蛇口をいっぱいまでひねったように、ジャージャーと目から水が流れてる。
女の涙に男は弱いのが一般的だが、愛華のは別物だ。
涙の二倍の汗を流し、涙の三倍鼻水を出す。
顔面上、三種の水流が、目、鼻、口を流しちまうんじゃないかと心配になるくらいの勢いだ。
そんな激しい号泣に、彩さんが慌てたようにこう言った。
「あ、愛華? どうした? 弥生の話聞いて悲しくなっちゃったのか?」
愛華が答える前に、弥生さんが「な、なんかゴメン」と謝っている。
当の愛華はえぐえぐと嗚咽を漏らし、中々言葉が出てこない。
仕方がないのでティッシュを箱ごと渡してやると、それでせっせと鼻水をかみだした。
その結果……愛華の顔面から水源が一つ減り、立て直しははかられた。
「ご、ご、ごめんねぇ、えっぐ……えっぐ……愛華ぁ、弥生ちゃんのぉ、キモチィ、すっごいワカルんだよぉ! 大好きな人ならぁ、見てるだけでもぉ、幸せだけどぉ……やっぱり触れ合いたいよねぇ、体温感じたいよねぇ、せ、せ、せつないぃ……うわぁぁぁん!」
そう言ってさらに号泣。
俺は隣で血の気が引いた……だって……なぁ。
弥生さんと彩さんの目線が完全に俺に向いているからだ。
いや……ちょっと待ってくれ。
俺? 俺に向くのか?
今は弥生さんのレンアイトークだろ。
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