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あれから弥生さんと彩さんに散々責められた俺は、グッタリしながら店の外まで女王達を見送りに出ていた。
あんだけ泣いた愛華は、今ではすっかり元気になって、
「二人ともぉ、今日はぁ、ありがとうねぇ!」
なんて両手をブンブン振っている。
「おぅ! 愛華、また来るからなっ!」
そう言って歯を見せながらニカッと笑う弥生さんは、店に来る前となんら変わりがない。
相当飲んでたはずなのに。
焼酎、一人で二本はあけてたし、ビールも日本酒も飲んでいた。
なのに顔色ひとつも変わってない。
「私は明日は休肝日! だから愛華、明後日また来るよ。えへへ」
一方彩さんはほろ酔いだ。
「えへへ」と笑うその頬は、ほんのりと赤く、軽くろれつが回ってない。
彩さんも弥生さんくらい飲んでいた。
あの飲みっぷりでこの程度ってのが恐ろしい。
「……ぁりがとぅござぃました…………、」
一応な。
俺も店員だしよ。
お客に挨拶してみたんだが、どうも聞こえちゃいないみたいだ。
俺の声が小さいってものあるけどよ、この三人は地声がデカイんだ。
「ばいばーい!」だの「またなー!」だの「本橋とチューしろよー!」だとか____え゛!!
ちょっと待て!
これ以上愛華に変なコト吹き込むな!
と、とにかく、しこたま飲んで上機嫌。
女王二人は手を繋ぎ、大声でしゃべりながら店を後にしたのだ。
「本橋さん、今夜もおつかれさまでしたぁ。つかれたでしょぉ?」
弥生さんと彩さんの後ろ姿が見えなくなって、愛華が俺に話しかけてきた。
”つかれたでしょぉ”って、そりゃあなぁ。
「結局あの二人、開店から閉店までずっといたな。あれだけ飲んで、ほとんど変わらねぇってすげぇよ」
半分呆れて、半分賞賛。
あの量を飲める女を俺は今まで見た事がない。
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