小料理屋ラブフラワー開店

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「二人共お酒が強いんだよぉ。強いだけじゃなくてぇ、飲み方が綺麗なの。いっぱい飲んでぇ、いっぱい食べてぇ、愛華達にもご馳走してくれてぇ、もうすっごぉく感謝、なんだゾ♪」 「まぁな。俺にも酒をおごってくれた。確かに綺麗な飲み方だ。金払いは良いし、酔って絡んだりもしねぇ。……いや、訂正。俺は若干絡まれた」 愛華が大泣きした直後、俺は二人に説教をくらった。 もっと愛華を大事にしろと。 つってもなぁ……大事にしろも何も、俺と愛華は社長と従業員の間柄。 それ以上でもそれ以下でもねぇ。 俺が愛華と付き合う事はまずないだろう。 だけど……コイツはそうは思ってないみたいなんだよなぁ。 「ささ、本橋さん! お店(なか)片付けたら早くオウチに帰ろ。お腹すいたでしょぉ? 愛華、お夜食作ってあげるからね!」 バチンと両目を瞑った愛華。 相変わらずウィンクが下手くそだ。 俺に夜食を作る? またか。 毎晩毎晩、家に帰ると作ってくれる。 自分だって疲れてるはずなのに。 栄養のバランスを考えた、夜中に食べても胃がもたれない、消化が良くて、低カロリーで、なのにバカみたいに旨いんだ。 はぁ……そんなコトしたって、俺はおまえと付き合ったりしないのに。 嬉しそうに俺を見て、「愛華、幸せぇ!」と、これまた何度も繰り返す。 ………………クソッ! 「愛華、今夜の夜食は俺が作る」 べ、別に、愛華の為とか、日頃の感謝とかじゃないからなっ! そ、そうだよ、愛華は借りがいっぱいある、これ以上増やしたくないだけだ! 「え? 本橋さんが……? 愛華の為に? 夜食を作ってくれるの……? それ、もしかして……愛華が可愛いから? 愛華が大好きだから? 愛華に”あーん”って食べさせたいから? きゃー! 愛華、幸せぇぇぇぇぇ!」 叫んだ愛華は、おでこを汗で光らせながら顔を真っ赤にさせていた。 なんだよ、そんなに嬉しいのかよ、って……ん……んー?  こいつは何してんだ? 愛華は両手で作ったハートの形を左胸に当てながら、激しく前後に動かしているんだが……もしかして、”胸がドキドキする!” を、身体で表現してるのか? 「や、おまえ、それって”胸がドキドキする!”のリアクションだろ! そんなんいらねぇから! あとな、なんでいちいちポジティブなんだよ! (ちげ)えわ! 夜食はたまたま気が向いただけだわ! それに俺は”ラブフラワー”の厨房だから、そう! ただの料理の練習だ! 深い意味はねぇ!   ほら! さっさと片付けて帰るぞ!」 やったー! ウレシー! とはしゃぐ愛華の背中を押して(動かなかったが)、俺達は客のいない店の中へ戻ったのだ。
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