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性格……そう、変わってねぇよなぁ。
愛華は昔から優しい女だった。
美人なのに気取らない、俺みたいな冴えない男をバカにしたりしねぇしよ。
それどころか……なんでか知らねぇけど、愛華は俺に惚れたんだ。
今の横綱愛華じゃなくて、5年前、もっと若くて 痩 せ て て 、美人だった頃にだぜ?
ありゃあ奇跡以外の何物でもないわ。
俺と愛華は短い間ではあったけど、付き合ってたんだ。
なんのバグだか愛華の方から猛プッシュ。
金もねぇ、特別イケメンでもねぇ、そんな俺は愛華に押されてあれよあれよと付き合って、1度だけ抱き合って、それでその一週間後は、俺からプロポーズしたんだよ。
____愛華、俺と結婚してくれ、
____仕事頑張るから、今は給料少ないけど、
____真面目に一生懸命頑張るから、
____だから夜の仕事を辞めて、
____俺のヨメさんになってくれ、
本当はさ、ダイヤの指輪でも買ってさ、金持ちが行くようなフランス料理屋でさ、カッコ良くプロポーズしたかった。
けど、昔から金のねぇ俺は、ダイヤが買えずに安物のシルバーリングを用意して、フランス料理は無理だったから、上の下くらいの和食の個室を予約して、そこで結婚を申し込んだんだ。
俺にしちゃあ奮発だった。
メシ代払った次の日からの数日間、ふりかけご飯でしのいだくらいだ。
それでも、奮発して良かったと思ったよ。
あの日の愛華、安物のシルバーリングを泣きながら指に着けて、嬉しそうに笑ってたんだ。
____愛華ぁ、良いお嫁さんになるからねぇ、
____本橋さんとぉ、あったかいぃ、家庭をぉ、
____作るんだからぁ!
____あ、それと子供は10人ホシイナ❤
なんてよ。
子供10人か……俺、色 々 頑 張 ら な い と な !
って、あの時が、俺の人生で一番笑った日かもしれねぇ。
幸せで、嬉しくて、この俺もとうとう結婚かぁ、近いうちに愛華連れて実家に行って、父ちゃんと母ちゃんを安心させてやろうって、浮かれてたんだ。
結婚するなら当然、愛華の親にも挨拶しなくちゃいけなくて、そういうの緊張するし、出来りゃあパスしてぇと思ったけど、さすがにそういう訳にはいかなくて、だから聞いたんだ。
愛華の田舎はドコなんだって。
そしたら、田舎はないし親もいない、随分昔に亡くなった、だから愛華の方の挨拶は無しで良いって。
ただ、妹がひとりいるから、近いうちに妹と3人でご飯が食べたい、そう言っていた。
____愛華に妹がいるなんて初耳だ、
____妹はいくつなんだ?
俺がそう聞くと、愛華は嬉しそうに話しだし、
____3才下なの、
____ちょっと内気な子だけど優しいんだぁ、
____親がいないからたった一人の家族でね、
妹を大事にしてるんだなぁって、そう思った。
____ふぅん、
____妹って愛華に似てるのか?
____似てるんなら美人だろうなぁ、
____仕事なにやってんの?
さらに俺がそう聞くと、やっぱり愛華は嬉しそうに笑ってよ、
____愛華とぉ、妹ちゃんはぁ、双子みたいにそっくりだよ!
____もちろん美人だよぉ!
____仕事はねぇ、今はお掃除関係のお仕事なの!
____あちこち行ってぇ、ビルとか施設とかぁ、
____ピッカピカにしちゃうんだから!
____すごいでしょぉ? エライでしょぉ?
____愛華ぁ、妹ちゃんが大好きなんだぁ!
____それでね……本橋さんに一つお願いがあるの、
____実はねぇ……………………、
そのお願いを聞いた時、少し俺は躊躇った。
だけど愛華は両手を合わせて、俺に頭を下げたんだ。
そんな姿を見ちゃったら……なぁ、嫌だなんていえねぇし、まぁいいかってOKしたんだ。
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