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当時の愛華はカウンターバーのホステスで、店が終わるのは深夜2時。
それから店の掃除があって、着替えて、送りのタクシー乗り込んで、アパートに着くのは大体3時過ぎなんだ。
愛華は毎日メールをくれた。
____お店終わったぁ!
____アパート着いたよぉ!
____これからシャワーを浴びたら寝まぁす!
____本橋さん愛してる、
____早く一緒に住みたいよぉ、
メールが来るたび着信音で目が覚めて、そして俺は寝ぼけまなこでそれを読むんだ。
幸せだった。
愛華のメール、愛華の気持ち、そういうのが嬉しくてたまらなかった。
ガラケーの小さな画面の文字を追い「俺も愛してる」そう呟いて二度寝する。
見るのはもちろん愛華の夢だ。
明日は会えるかな、早く会いたいな。
愛しい愛華、優しい愛華、俺を好きになってくれた愛華、これからの人生を共にする愛華……愛華は俺の全てだ。
愛華がいれば何でも出来る気がするよ。
仕事、今以上に頑張ろう。
それと、酒とタバコはもうやめよう。
子供を10人こさえるんだ。
10人いたら金がかかる。
だからたくさん働いて、子供達と愛華と、それから愛華の妹も、みんなまとめて俺が面倒見るんだ。
だからやめる、酒とタバコをやめてその分は貯金しよう。
将来の為に、家族の為に、愛華の為に。
愛華と出逢って ”人生で初めて” ってコトが増えた気がする。
初めてこんなにやる気になった。
前向きに未来を見る、こんなの初めてだ。
愛華、愛してる。
今すぐにでも逢いたいよ、今すぐにでも抱きたいよ。
だけどガマンだ、今は眠って明日は仕事を頑張ろう。
…………クソッ、
あの頃俺は本気でそう思ってた。
だけど、ある日突然、愛華からのメールが止まった。
メールだけじゃない、携帯も繋がらず音信不通になってしまった。
何かあったのかと心配でアパートを訪ねてみたら、そこはもぬけの殻になっていた。
愛華は忽然と姿を消したのだ。
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